原死因選択ルールについて
原死因選択ルールと主要病態選択ルール
内容が似ているので混乱しやすいですが、この2つは全くの別物です。
本当は主要病態選択ルールも書きたかったのですが、長くなりすぎたのでとりあえず原死因だけ。
原死因選択ルール
一般原則、選択ルール(ルール1~3)、修正ルール(ルールA~D)
原死因とは、死亡の原因を引き起こした一連の事象の起因となったものを指します。
なお、症状及び死亡の様態(心不全、呼吸不全等)は含みません。
一般原則
死亡診断書に多数の病態が記載されている場合には、Ⅰ欄の最下欄に単独で記載された病態が、その上欄に記載されたすべての病態を引き起こす可能性がある場合に限り、その病態を選ぶ。
原死因の定義を理解していれば、すんなり入ってくるかと思います。
選択ルール
ルール1.一般原則が適用できず、死亡診断書に最初に記載された病態に帰着する上下の因果関係がある場合には、この上下の因果関係の起因を選ぶ。最初に記載された病態に帰着する上下の因果関係が多数ある場合には、最初に記載された上下の因果関係の起因を選ぶ。
Ⅰ欄の一番上に先に書かれた病態の因果関係を辿ってくださいということです。
Ⅰ欄の一番上に先に書かれた病態なので、途中で記載の順がひっくり返っても、そのまま因果関係を追いましょう。
ルール2.死亡診断書に最初に記載された病態に帰着する上下の因果関係の記載がない場合には、この最初に記載された病態を選ぶ。
明らかに因果関係がない場合は、辿らないでくださいということです。
これがないと、死亡統計がめちゃくちゃなことになります。
ルール3.一般原則、ルール1又はルール2によって選ばれた病態が、明らかにⅠ欄又はⅡ欄に記載されている他の病態の直接影響による場合には、先行する病態を選ぶ。
これまでのルールで選ばれた病態が、明らかにⅡ欄と因果関係がある場合は、Ⅱ欄の病態までたどるということです。
特に肝硬変は病態がややこしいので、気をつけましょう
- (肝炎→)肝硬変→門脈圧亢進→食道静脈瘤(出血)→急性貧血 等
- (肝炎→)肝硬変→門脈圧亢進→肝性脳症→肝性昏睡,誤嚥性肺炎 等
修正ルール
ルールA:老衰及びその他の診断名不明確な病態
統計のためのデータなので、選択された死因が不明確な場合は選び直そうということです。
老衰は特定の病態を指すものではないので、診断名が不明確な病態に含まれます。
その他に、詳細不明の心停止、低血圧(いわゆる「ショック」)、循環器疾患、呼吸不全も特定の病態を指すものではないので含まれます。
ただし、乳幼児突然死症候群(SIDS)は、発症機序は不明ですが疾患として明確に区別されているため、ルールAの対象外となります。
ルールB:軽微な病態
明らかに死因に関係していない病態は選びません。
陥入爪(巻爪)やう蝕(虫歯)が自体が直接死亡に関係するかと言われると、まあ普通ないよね……ってことです。
ルールC:連鎖(Linkage)
因果関係が明確な場合はわざわざ書かなくて良いということです。
アテローム<粥状>硬化(動脈硬化)(→高血圧)→脳梗塞
アテローム性脳梗塞の場合は、アテローム硬化が脳梗塞の原因なのだから、わざわざ書かないということです。
また、アテローム硬化が起これば高血圧も発症するので、高血圧も連鎖します。
ルールD:特異性(原死因の明確化)
選ばれた病態を修飾して詳しく説明できる場合は、詳しく説明してくださいということです。
感染性○○とか、××性心疾患とか
一つ一つで見ればそこまで難しくないのですが(ルールCを除く)、これらを順番に当てはめて見ていかなければならないというのが、難しく感じる要因だと思います。
また、因果関係を辿るためには、基礎分野の解剖生理や病態の理解が必要不可欠となります。
基礎分野の知識をしっかり自分のものにできていれば、体感難易度は多少下がるかと思います。
なお、ルールCは完璧にしようと思うとICD-10の2巻をほぼ暗記する羽目になるので、深追いは避けたほうが良いと思います。