理系医療従事者の備忘録

現場とデスクを反復横飛びしています

医療資格保有者が診療情報管理士を取るメリットを考える

はじめに

こんにちは

私は看護師免許を元々持っており、診療情報管理士は通信教育への編入で取得しました。
2022年度の診療情報管理士現況調査によると、診療情報管理士のうち、何らかの医療系国家資格保有者は13.7%だそうです。
日本病院会は国家資格保有者の診療情報管理士認定者を増やしたいようですが、取りに行くだけの価値はあるのか。
今回は、医療系国家資格に加えて診療情報管理士を取る意味はあるのかというところを、取ってよかったと思った場面を挙げながら、自分なりの考えを述べていきたいと思います。

スペック

  • 通信教育編入
  • 看護師免許持ち
  • 臨床歴5年
  • 働きながら取得した

あとは、テクノロジ系の心得が多少あります。

自分の職場での立ち位置

元々

  • 所属は(当然)看護部門
  • 看護師の中では(ITの心得があった方なので)臨床でのPCトラブル対応とかやってた
  • その延長でシステム管理課と顔見知りになる程度の関係はあった

現在

  • 元々の臨床業務に以下の事務的業務が加わった
    • 診療録の点検
    • 監査
    • 開示
    • 統計資料作成
    • システム管理
    • 経営分析
  • 診療録管理委員会メンバーになった
  • 部門内での記録管理委員会リーダーになった
  • システム管理課との折衝が自分のサブ業務になった
  • ついでに診療記録の内容に関して医事課との折衝も行うようになった

良かったと思ったとき

事務的な視点と臨床的な視点の両方を持てるようになったこと

記録監査や業務改善においては、事務的に必要な記録の内容と臨床的に必要な記録の内容は時折乖離します。
両方の視点を持っていることは、その乖離や齟齬に気づけるということですので、そういった意味では取ってよかったと思っています。
例えば…

診療録管理委員会メンバーになったこと

これ自体は個人的には良かったことではないのですが、看護師と診療情報管理士の両方の知識がある私が参加していることは、事務サイドと臨床サイドとの折衝をする上で色々と役に立っているそうです。

看護記録委員会の活動が活発になったこと

看護記録委員会は診療管理委員会で行う記録監査の予備調査や看護記録に関わる業務改善を行っています。
診療情報管理士を取得する前から看護記録委員会には参加していましたが、臨床的には不要だけど事務的には必要という記録がしばしばあり、それは毎回事務に問い合わせないと分からなかったため、委員会の活動が鈍りがちでした。
ですが、診療情報管理士を取ってからはある程度の判断ができるようになったため、問い合わせの手間が短縮され、特に業務改善に積極的に取りかかれるようになりました。
もちろん、事務部門に確認は行っていますが。

三者機関による監査で評価されたこと

診療情報管理士が事務方にいたり、臨床現場で事務業務を行っているということは珍しくはなくなりましたが、現役の看護師が診療情報管理士を持っているのは珍しいようで、ご評価いただけました。
臨床に診療情報管理士がいることは、診療記録の質の担保という点において良い影響があると考えています。

医療法施行規則と診療報酬制度に少し詳しくなったこと

自分の行っている看護ケアや看護記録が制度的にはどういった理由で必要なのか。あるいは、何点の加算になるのか。ということを知ることができたことで、記録業務に対する必要性を再度理解することができました。
また、看護記録委員会で記録に関する周知を行う時に、「どういった根拠に基づいてその記録を残す必要があるのか」ということを明確に示せることで、協力や理解を得られやすくなったと感じています。

自分の仕事上での強みを活かす機会が増えたこと

正直看護師に求められる情報処理スキルは、電子カルテと(最低限のWordとExcelとPPtの操作)が使えれば十分とされていて、それ以上のスキルは過剰というか、持て余していました。
ですが、診療情報管理士として委員会等に参加するようになったことで、それらのスキルを発揮する機会が増えました。

ちょっと損したと思ったとき

業務範囲は増えたけど給料が上がらなかったこと

上記の良かったと思ったときの逆というか…ぶっちゃけて言えば仕事の範囲は増えましたが、給料は増えませんでした。
資格手当ほしい…

業務の線引きが曖昧になったこと

看護師が事務に片足を突っ込んだことで、事務的な業務の依頼がめちゃくちゃ増えました。カルテ監査、カルテシステムに関すること…臨床主業務の負担を見ながら、片手間で対応していかなければならないのでだいぶ厳しいです。

自身の立場も曖昧になったこと

上の内容と重複するのですが、事務部門からの業務の依頼が増えたことで、私のことを知らない人からは、事務職だと思われることも多くなりました。診療情報管理士業務は確かに事務業務なので、そこしか見てない人にそう思われるのは仕方ないかなとは思っています。

まとめ

個人的には取ってよかったとは思っています。
ですが、1年間通信教育を受けて、更に認定試験を受けなければならないのは、かなり大変だと思います。
そういったことから、医療系資格保有者がスキャリアアップとして取るには、かなり敷居が高く、リターンも正直…とは思ってしまいます。
看護師なら、臨床に即する資格や研修のほうがずっと評価されるでしょう。
ですが、診療情報管理士の知識は、管理職になって経営に関わるようになったときに、持っているとすごい助かると思います。
(でも認定看護管理者研修でいいと思う)
また、カルテ管理や情報処理に関わる機会が多かったり、そういう業務に興味がある方も検討する価値はあると思います。

総じて、医療系国家系資格保有者が診療情報管理士を取りに行くにはハードルがいくつかあります。

  • 臨床業務をやりながら学習を進めなければならない
  • 臨床と学習で頭の切り替えをしなければならないのでかなり大変
  • とっても直接のキャリアアップに資するかは微妙

過去に診療情報管理士認定試験の勉強法を軽くまとめています。

syamichin.hatenablog.com

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